【2023年度 CO+CREATION KOBE Project事業】
この写真右側の車椅子の方、何をしているか分かりますか? 実は、木の上で過ごす「ツリーイング」にチャレンジしているんです。
「昔はよく登山などを楽しんでいたのに、高齢になり、自然から遠ざかっていたそうです。私たちOUTDOOR LAB主催の『里山ユニバーサルツーリズム』に参加され、ロープで樹上へ上がると、とても喜ばれ、気持ちよくてウトウトされていらっしゃいました」
こう話すのは、株式会社Happy「OUTDOOR LAB」事業部長の吉川史浩さんです。「自然を諦めない」という理念を掲げて、安全を確保しながら、障がいや年齢を問わずアウトドアを楽しめるアクティビティを企画しています。
「里山ユニバーサルツーリズム」は神戸市北区の自然を活かした事業で、CO+CREATION KOBE Projectに提案し、採択されました。
2023年11月に実施した「ユニバーサルキャンプ」では、高齢者や障がいのある人たちも交えて、自然のなかで焚き火を囲み、和やかな時間を過ごしました。その時の様子はこちら。
吉川さんに、今年度の活動の振り返りと今後の展望について、お話をお伺いしました。
一般募集で開催したデイキャンプが人気、追加開催
2023年度の取り組みでは、夏に沢登りやツリーイング、秋冬には紅葉を楽しむハイキングやキャンプ、スタンドアップパドル(SUP)でのヨガなど、さまざまなイベントを実施しました。特に、秋に行ったデイキャンプは反響が大きく、追加開催したほどです。
SNSなどで参加者を募集して開催した12月の「クリスマスパーティー・デイキャンプ」では、クリスマス前ということもあり、大人向けにはリース作り、子ども向けには周辺散策や焚き火での焼きマシュマロ、体を動かして楽しむロープ遊びなどをメインに活動しました。
自然に囲まれたロケーションを活かし、流木を活用したクラフト作品づくりや、焚き火や薪割りのレクチャー、焼きリンゴやミネストローネづくりなどの野外調理など、楽しみながらアウトドア力を高められるような内容にしたのですが、アウトドア活動をあまりしたことがない参加者さんからは「外は肌寒いけれど、自然のなかで過ごす時間は良いですね」と好評でしたね。
アウトドアをすべての人に、神戸の豊かな里山の魅力をもっと色んな人に
今回実施したデイキャンプ・沢登り・ツリーイング・ハイキングといった「アウトドアアクティビティ」を今後も継続してプログラム化し、神戸市内の里山エリアの自然環境やアクセスの良さを、地域内外から色んな人が訪れる機会につなげたいと考えています。
私たちはいつも、障がいがある人もそうでない人も、一緒に楽しもうというスタンスなんです。アクティビティやイベントを開催するときに、今回はこういうことをするけれども、どういう工夫をしたら一緒に楽しめそう?と、参加者たちとお話しながら一緒に取り組みたいですね。
参加者さんからは「神戸にこんな自然があったんですね」「自分たちだけではなかなかできない体験ができて楽しい」と言っていただき、「秘密の場所」を共有したような感覚になって、うれしくなりました。みなさんが楽しんでいることが、私を含めたスタッフの喜びですね。
北区に素敵な自然があふれていることは、まだまだ知られておらず、アウトドア知識があるインストラクターやガイドも常駐していません。里山の利活用について関心がもっと高まれば、アクティビティなどを実施する事業者なども増加し、持続可能な里山の保全にもつながっていくのではないかと思っています。
子ども向けの自然体験の場で、郷土愛を育む
2024年度は新たな試みとして、六甲山系を舞台に、子どもたちが自然の中での活動を楽しめる場所として「OUTDOOR LAB KIDS」を始めます。
アウトドアイベントはファミリー層のニーズが高く、特に子ども向けの自然体験ができる場所が増えてほしいという声も寄せられました。幼い頃から六甲山系に親しみ、おらが山として愛するようになれば、自然を大切にしようという気持ちや郷土愛が育まれるだけでなく、年齢の近い人同士で取り組むと、よい良い体験につながると思っています。
年齢・性別・障がいの有無など関係なく、だれでも自然活動を楽しめることを軸にした「OUTDOOR LAB」に、子ども向けのアクティビティを展開するチャンネルを追加するようなイメージで「OUTDOOR LAB KIDS」を展開します。
2024年度からは、指導者育成にも力を入れます。「ツリーイングインストラクター」になりたい人向けの講座を進める予定で、キャンプや沢登りといったアウトドアイベントの作り手として参加してもらい、ノウハウなどを伝えていきます。
今後も、活動を通して蓄積したノウハウや写真・動画を活用して里山エリアの魅力を積極的に発信し、「そこに行けばアウトドアアクティビティが楽しめる」というような拠点づくりにも取り組んでいけたらと考えています。
写真/山下和希(株式会社神戸デザインセンター/吉川さんインタビュー部分)、株式会社Happy(撮影写真以外) 提供
取材・文/森本亜沙美