「福祉✕アウトドア」でチャレンジ!神戸市北区の里山エリアの魅力をすべての人に/株式会社Happy

民間事業者などの技術・ノウハウを活かし、神戸市の行政課題や、地域課題の解決につながる取り組みに対して神戸市が支援する「CO+CREATION KOBE Project」。

神戸市北区にある農村地域において、里山の保全と交流人口・関係人口を増やすため、CO+CREATION KOBE ProjectのWISH型事業として選定されたのが、株式会社Happyの「OUTDOOR LAB(アウトドアラボ)」事業です。

「目の前の人がどんな暮らしをしたいか」に寄り添う事業を手がける株式会社Happy

株式会社Happyは神戸市長田区に本社を置く企業で、「アタリマエをリノベーションし、日常の選択肢を増やす」ことをコンセプトに、顔の見えない誰かではなく、顔が見える目の前の人がどんな暮らしをしたいかに寄り添い、その手助けとなるようなさまざまな事業を手がけています。

例えば、サービス付き高齢者向け住宅の「はっぴーの家」、物件の仲介だけではなく仕事・コミュニティーの提案まで行う「おせっかい不動産」、ボルダリングジム「ワゴムクライミングジム」のほか、就労支援B型事業所、訪問介護・看護ステーション、フリースクールなど、業態はさまざまです。

2023年1月からスタートしたOUTDOOR LAB事業は、年齢や性別、障がいの有無を問わず全世代を対象に、登山・トレイルランニング・キャンプといった「アウトドアアクティビティ」を企画・開催するなど、里山エリアの自然を活かした魅力あるコンテンツづくりに取り組んでいます。

今回は、11月28~29日に実施された「多世代ユニバーサルキャンプ」の模様をお届けします。

年齢・障がいの有無などを気にせず楽しめるキャンプ、子どもからシニアまで25名が参加

「多世代ユニバーサルキャンプ」には、同社が運営する「はっぴーの家」の利用者などが参加しました。設営・参加者のサポートは「はっぴーの家」「就労支援B型事業所WAGOMU」のスタッフらが行い、参加者は7歳から90歳まで、総勢25名となりました。

ユニバーサルキャンプは、「普段キャンプに行くことができないと思われている人でも行けるキャンプ」で、一般的なキャンプで味わう体験を、少し工夫することで届けています。

取材に訪れたのは1日目の昼食時。今回のキャンプは気軽にアウトドア気分が楽しめる内容になっており、食事はキャンプらしいメニューが企画されていました。お昼ご飯ではスタッフが作った炊き出しカレーや、バリスタを目指しているスタッフによるドリップコーヒーが振る舞われ、焚き火では大人も子どもも交じって、焼き芋や焼きマシュマロを堪能しました。

ランチ後は周辺を散策。公園では色づく紅葉が楽しめるほか、中山大杣池を望む湖畔広場もあるので、日中は周辺を散策。夜は星空を眺めながらの散歩を楽しんだそうです。

高齢者、障がい者は両日日中のみの参加で、宿泊したのは4~5名程度。防寒対策と寝心地の良さを重視し、テント・マット・寝袋などは、標高2,000m級の登山でも使われているグレードの装備で夜を過ごしたそうです。

ウクレレを演奏する人や演奏に合わせて歌う人、踊る人など、焚き火を囲んで和やかな時間に。参加者らは「紅葉など四季を感じられる場所で、青春時代に戻ったようだ」と、自然のなかでのびのびと談笑したり、食事したりと楽しんだ様子でした。

スタッフは食事中も参加者一人一人の様子を注意して見ており、「○○さんちゃんと食べれてる?」「飲み物いる?」などと声かけをして、小さな異変にもすぐ気づけるような姿勢だったのが印象的でした。

今回のキャンプにスタッフとして参加したケアマネジャーの岩本 茂さんは、神戸市北区の出身ながら「こんなに自然が豊かなところがあることを初めて知った」と語ります。

ケアマネジャーとして高齢者や障がいのある方を見守る際、気にかける部分は「屋内でも屋外でも変わらない」ものの、自然に囲まれて屋外でアクティブに活動するほうが「明らかに皆さん生き生きしている」のだそうです。

また、高齢者や障がいのある方がアウトドア活動をすることは、リハビリなどの面でもプラスになるといい、自然のなかで外の空気に触れてたくさん歩いてみたり、焚き火を囲んで一緒にご飯を食べることで笑顔や会話がより増えたり、普段寡黙な人が「アウトドア用の車椅子に乗ってみたい!」とチャレンジしてみたりと、屋内で過ごすよりもよりアクティブになるそうです。

「アウトドア×福祉」に取り組む事業部長・吉川さんにインタビュー

一般社団法人Water Ground Mountainの元代表理事で、現在は株式会社HappyのOUTDOOR LAB事業部長を務める吉川史浩さんに、事業が誕生したきっかけや、今回のユニバーサルキャンプについてお伺いしました。

「このOUTDOOR LAB事業は、ボルダリングジムなどを手がける一般社団法人Water Ground Mountainと、サービス付き高齢者向け住宅などを手がける株式会社Happyが経営統合したことによりスタートしました。

両社ともに長田区に本社があり、もともと交流があったことと併せて、野外活動への知見と障がい者支援事業の経験があるWater Ground Mountainと、介護など医療的なサポートができるHappyとで、高齢者や障がいのある人などが気軽に自然に触れられる機会をつくれるのではないかと経営統合後に新たに始まったのが、今回のOUTDOOR LAB事業です。

今回のユニバーサルキャンプは、当初10人ぐらいの予定だったのですが、声をかけてみたら、想定よりも大人数になりました。

主催者としても、参加者さんとしても、普段の様子を知っている人が居るのは安心できますね。例えばご飯をしっかり食べているのか、そうでないのか、お手洗いのタイミングなど、日常生活を知っているからこそ気付きやすい点はあると思います。

今回は知り合い同士でのキャンプとなりましたが、初めて参加される方がいらっしゃる場合は、キャンプ参加前に、普段の生活はどうされていますか、どういうところに気をつけたら良いですかといったことを、より細かくヒアリングしています。

将来的にはあえて“ユニバーサル”と言わなくても、障がいの有無関係なく『キャンプしよう』って集まることができれば理想ですね」と、笑顔でお話しされました。

取材・文/森本亜沙美
写真/山下和希(株式会社神戸デザインセンター)