神戸市と連携し、企業・地域を循環の輪でつなぐ持続可能な社会へ/アミタホールディングス株式会社

2023年3月、「持続可能なエコシステム社会」の構築に向けて、アミタグループと神戸市が連携協定を締結しました。

神戸市が掲げる「まわり続けるリサイクル」の実現を目的にした連携で、アミタグループが開発・普及を進めている、資源循環機能とコミュニティー活性化機能を併合した互助共助コミュニティー型資源回収ステーション「MEGURU STATION®(めぐるステーション)」を通じた、リサイクルの仕組みづくりを主軸に取り組んでいます。

事業連携協定の締結から約1年。アミタ株式会社 取締役 宮原伸朗さんと、アミタグループから出向している神戸市環境局 資源循環課 櫻井盛太朗さんに、これまでの取り組みについてお伺いしました。

アミタ株式会社 取締役 宮原伸朗さん(左)と神戸市環境局 資源循環課 櫻井盛太朗さん

市民・自治体・企業をつなぐ「ハブ」としてリサイクルを促進

当社はさまざまな事業を行っていますが、一言で表すと「持続可能なエコシステム社会を実現する」ために取り組んでいる会社です。創業地は兵庫県姫路市で、「この世に無駄なものはない」という理念のもと、企業の工場から出てくる廃棄物(発生品)を有効活用してきました。

現在では資源リサイクル事業のみならず、持続可能な企業経営への移行戦略支援(シンクタンクではなくドゥタンク)をはじめ、環境管理業務のICT・アウトソーシングサービスの提供や、森や海を守るための環境認証審査サービスなども行っています。しかし企業だけで持続可能なエコシステム社会をつくることは難しいので、自治体との連携も積極的に進めています。

神戸市は2011年から容器包装プラスチックの分別収集に取り組んでいますが、再資源化率の低さなどの課題を抱えていました。そこでアミタは、2021年6月にプラスチック資源の地域拠点回収モデル事業運営の支援業務を神戸市から受託し、回収したプラスチックの利用目的を明確にしたうえで品目別に回収・リサイクルする取り組みを開始しました。以来、回収資源をプラスチックとして使い続けることができるように、「まわり続けるリサイクル」を促進しています。

取り組みの中では、アミタが宮城県南三陸町や奈良県生駒市で実証実験を行った「MEGURU STATION®」のノウハウを神戸市でも取り入れています。2021年に「ふたば資源回収ステーション」、翌年に「あづま資源回収ステーション」を開設。神戸市の企業版ふるさと納税(人材派遣型)でアミタグループから社員が出向しているのですが、当社が培ってきたノウハウなどを神戸市に共有し、資源回収ステーションの設置を進めています。現在、22カ所まで拡大しています(2024年4月時点)。

ただ、持続可能な仕組みにしていくために、こうした資源回収ステーションに集まった資源を、企業などがどう処理していくのか、ビジネスとしても持続可能でないと成り立ちません。この課題に対応するため、アミタは自社が持つ企業とのネットワークなども活用し、市民のみなさんと自治体と企業をつなぐ「ハブ」的な役割を担っています。

「資源回収ステーション」を通じてサーキュラー・エコノミーに取り組む

質の高いリサイクルは市民や自治体、企業などが連携して成り立ちます。当社は2021年に「J-CEP(ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ)」という、持続可能な社会の実現を目指す企業などのコンソーシアムを立ち上げました。加盟企業は53社で、神戸大学、神戸市など9団体も、オブザーバーとして参加いただいています(2024年3月30日時点)。

「サーキュラー・エコノミー」とは、地下資源の投入量・消費量を抑えながら地上資源のストックを有効活用し、サービスなどを通じて付加価値を生み出す経済活動のことです。事業活動を通じてサーキュラー・エコノミーに取り組みたいと考えている企業は多いものの、社会実装するためのフィールドが少ないという課題がありました。そこで神戸市の資源回収ステーションをベースとした、企業と市民が協働するサーキュラー・エコノミーの取り組みを始めました。

J-CEPではこれまでに、地域住民が分別回収したプラスチックを使用したリサイクルベンチを設置したり、回収資源の量を金額に換算し、その総額分の絵本を寄贈したりしました。そのほかにも、回収したペットボトルキャップからプチプチ®やブルーシート、地元のプロサッカーチーム・ヴィッセル神戸のロゴが入った爪切りを作製するなど、さまざまな形で地域内の循環に取り組んでいます。

また、企業としてウェルビューイング向上を重視されているということもあり、神戸市に本社があるネスレ日本株式会社には、資源回収ステーションの利用者向けにコーヒーを提供いただいています。色んな世代の人が資源回収ステーションに集まり、コーヒーを軸にして交流が生まれ、健康寿命の延伸につながっていくことを目標としています。

利用者向けには、LINEやスタンプカードを用いたチェックイン機能を使い、一定数ポイントを貯めるとプレゼントを進呈するといったインセンティブを設けている拠点もあります。取得した利用者のデータと資源回収のデータを企業が活用することで、需要予測に基づいた無駄のない製品製造の実現につなげることも今後考えられます。こういったサーキュラー・プラットフォームの構築に力を入れています。

また、新しいライフスタイルの提案として、量り売りの実証実験も検討しています。シャンプーやボディソープといった肌に直接触れるものは、洗濯洗剤と違って提供方法などにおいて薬機法の厳しい規制があります。規制に準拠しようとすると、メーカーや小売企業に運用面・コスト面での負荷がかかることも考えられます。こうした課題の洗い出しと解決方法を模索しながら、サーキュラー・エコノミーの時代に合わせた規制対応なども自治体・企業と協働し、国に提言していけたらと考えています。

ほかにも、神戸市とのプラスチックリサイクルプロジェクトでは、メーカー、リサイクラーの18社が協働し、75店舗でつめかえパックの回収も行っています。将来的には、回収したつめかえパックから新しいつめかえパックをつくり、市民に提供することを目指しています。

こうした神戸市とのさまざまな取り組みを今後も継続し、引き続き企業との連携を進め、集まった資源を活用するための「出口」をしっかりと構築していきたいです。

資源回収を通じて世代間交流も増加、地域の日常が垣間見える場所に

2年ほど神戸市環境局の職員として出向し活動しているアミタの社員・櫻井を通して、地域の人たちとのコミュニケーションの取り方など、民間企業では経験できない多くのことを学んでいます。

資源回収ステーションの取り組みでは、地域の方にコミュニティーとして活用いただいている実感があります。放課後には子どもたちが集まってきて友達と遊んだり、高齢者の方もちょっとコーヒーを飲んで喋ったりと、普段交わらない世代が同じ時間・場所を共有しているというのは、なかなか他の取り組みでは見られないのではないかと思います。

資源回収ステーションの利用者にアンケートを実施したところ、半数以上が、ステーションを訪れたことで人に会う機会が増えたと感じていて、ゴミや環境への関心も、7割以上の人が高まったと回答しました。ステーションを通じて、コミュニケーションが増加し、環境への意識を持っていただけたという点では、非常に効果的な取り組みだったと感じています。

実際に、スタッフから名前を覚えられるほど何百回も通っている方がいたり、母の日にリユースコーナーでガラス食器を選ぶ子どもがいたりと、地域の日常が垣間見える空間になっています。

神戸市環境局は2021年からこれまでに、22カ所の資源回収ステーションを設置しました。将来的には総数としては200カ所近く、小学校区ごとに1~2カ所ずつあるような状態を目指したいです。

今後も神戸市とともに産官学で連携し、資源回収ステーションを軸に資源循環ネットワークづくりと地域コミュニティー醸成を進め、持続的なエコシステム社会の実現に向けて取り組んでいきます。また、神戸市から全国へ広がる活動としても推進していきたいです。

取材・文/森本亜沙美

写真/神戸市、アミタホールディングス株式会社 提供