「放置竹林」を整備して里山保全&特産品開発!美味しく・楽しくまちづくり/淡河バンブープロジェクト

物干し竿や割り箸、竹筒から、竹馬などのおもちゃまで、昔から生活の中の色々な製品に使われていた「竹」。しかし生活が豊かになるにつれて、そうした日用品は、安価で加工しやすいアルミ製・プラスチック製に置き換わっていきました。

こういった竹製品の需要低迷や、竹林所有者の高齢化などで次第に「竹林」が整備されなくなり、それにより生じたのが、全国的な「放置竹林」問題です。

兵庫県内では淡路市、丹波篠山市のほか、神戸市北区などで問題になっています。そんななか神戸市北区淡河(おうご)町の地元住民で立ち上げた団体「淡河町地域振興推進協議会」が、放置竹林を整備し、環境保全活動とともに、伐採した「竹」の有効活用を進める淡河バンブープロジェクトを行っています。

地元住民など約50名で竹林整備、メンマなどに加工

淡河バンブープロジェクトは“美味しく・楽しく”をコンセプトに、2019年から活動をスタート。参勤交代の大名も利用したとされる江戸時代の建物をリノベーションした「淡河宿本陣跡」を拠点に、淡河産竹菜(メンマ)・竹細工・肥料づくりのほか、竹炭を活用した商品を開発しています。

メンバーは同施設を運営する武野辰雄さんを中心に、淡河の里山で生活する人や都市部で生活する人、そしてプロジェクトに賛同する協力者など、約50名が活動しています。

行政(神戸市)・地域(淡河町)・民間企業が一体となったサステナブル(持続可能)な取り組みを提案し、2023年度の「CO+CREATION KOBE Project」で事業が採択されました。

CO+CREATION KOBE Project採択により、竹林伐採がパワーアップ

淡河バンブープロジェクトの代表・武野さん(左)。プロジェクトの中心メンバーの安藤さん(右)は、元町で食料品店「ネイバーフード」を経営。

2023年度の取り組みが折り返しを迎えた12月に、淡河バンブープロジェクト 代表を務める武野さんにオンラインで取材しました。

武野さんは淡河町出身で、大学進学を機に一度兵庫県を離れ、県外で就職しました。結婚をして子どもができたことをきっかけに、約10年ほど前に淡河町にUターンしたそうです。

「将来のキャリアプランを考えたとき、サラリーマンを続けるのも良いけれど、何か新しいことにチャレンジしたいと思っていました。それで淡河町に戻ったら何をしようかなと考えて、もともと家業で田畑もあったので、漠然と農業をしようと。技術やノウハウがなかったので、地域活動のお手伝いをしながら、地域への携わり方を覚えていきました」

それから数年経ち、武野さんは淡河町で飲食店をオープン。商材探しも兼ねて日頃から食べ物に関する情報収集をしていたところ、広島県で「純国産メンマサミット」が開催されることを知りました。話を聞くだけでもと気軽に参加したことが、現在の活動につながっているそうです。

イベントを通じて、放置竹林の有効活用方法として、伐採した竹を加工した特産品づくりに取り組む活動などの講演を聞いたそうで、とても印象に残ったと振り返ります。

「私が暮らす淡河町でも、うっそうとした竹林を日常的に見ていて、何か対策ができればと思っていました。伐採した竹を何かに有効活用することは、放置竹林の解決にもつながりますし、淡河町でも同じようにできるのではないかと考えたんです。最初は個人で細々と始めて、昨年からはプロジェクトメンバーと一緒に取り組んでいます。

この事業が神戸市のCO+CREATION KOBE Projectに選ばれ対外的にも良いイメージがつき、今までやってきた活動が認められたような気持ちになり、メンバーも喜んでいました。また、補助金で竹林整備の効率化や安全確保をすることができました」

伐採した幼竹をメンマに加工し、レトルトカレーを開発!

竹林には豊作の年と、「裏年」と呼ばれる不作の年が交互に来るそうで、2023年は不作の年にあたり、収穫量は昨年比で5分の1から6分の1ほどに落ち込んだそうです。

「竹は生ものなので、鮮度のためにも、基本的に伐採したその日に処理しています。採れたてでやわらかいうちに切って小分けにして、ゆでる・塩漬けにする・発酵させるという手順でメンマに加工していきます。昨年は処理が追いつかないほどの収穫量だったので、今年も同じぐらいの収穫量と予想して、乾燥味付きメンマなど、メンマ単体での商品化を想定した事業計画を立てていました。

しかしたけのこ農家さんから今年は不作と聞き、実際収穫量もかなり少なかったので計画を見直しして、長期間の保存ができるレトルトカレー商品に取り組みました」

レトルトパック化のノウハウや設備がある垂水区のカレー店「ワンダーカレー店」が製造協力し、淡河町産メンマを使った「淡河メンマカレー」を制作・発売。バンブープロジェクトのメンバーがパッケージデザインを手がけ、商品のパッケージングもメンバーで行いました。

11月に開催された神戸市内の生産者が集うマーケットイベント「BE KOBE収穫祭」で販売すると、お客様から「スパイシーな味付けが美味しくて、大きめに切ったメンマの食感が良い」と好評だったそうです。

レトルト商品は、2種類をそれぞれ90食ずつ制作しましたが、ほぼ完売。現在はこうしたイベント出展のほか、淡河宿本陣跡内にあるカフェ「本陣なな福」、バンブープロジェクトメンバーが経営する中央区の食料品店「ネイバーフード」、ワンダーカレー店でのみ購入できますが、将来的には通販なども構想しているそうです。

「2024年は豊作と想定して、引き続きメンマカレーやメンマを使った商品開発にもチャレンジしていきたいと考えています。今後も、『竹』を美味しく・楽しく有効活用する取り組みを続けていきます」

取材・文/森本亜沙美

写真/淡河バンブープロジェクト提供