地域密着の拠点で、子ども向けプログラミング教室を開催!ITの力で地域活性化に挑む/株式会社Axros

神戸市内全域に194カ所ある「地域福祉センター」では、自治会や婦人会、PTA、ボランティアグループなどの地域団体が、さまざまな活動を行っています。しかし利用者は高齢者世代が中心。地域福祉センターの利活用の幅を広げ、多世代交流を促進し、子どもたちにも気軽に訪れてもらえる場所にしていきたいという神戸市の思いがあります。

IT技術を活用して、企業の支援や地域活性化などの事業を手がける株式会社Axrosは、この課題解決にチャレンジするべく、2023年度のCO+CREATION KOBE Projectに「こども向けプログラミング教室による、多世代交流と地域コミュニティ活性化事業」を提案して、採択されました。

この事業では、継続的に実施する「こども向けプログラミング教室」を軸に、地域福祉センターといった地域の憩いの場でさまざまなイベントを実施。小学生対象とすることで、指導する学生や、子どもたちの保護者など、普段あまり地域福祉センターを訪れない世代を巻き込み、利用者との交流を図ろうという狙いです。

株式会社Axros 代表取締役の川上 聰さんに、2023年度の事業の振り返りや今後の展望などについてお聞きしました。

地域交流をさらに進めるため、ロボットプログラミングを導入

2022年度までに地域福祉センターにインターネット設備(Wi-Fi)が導入されたとのことで、導入業者と連携し、設備を活用できるプロモーション企画を提案しました。子どもたちに人気のゲームソフト「マインクラフト」を使って、プログラミングの基本的な考え方や楽しさが実感できるような内容にしたのですが、子どもたちや一緒に参加した保護者からは「楽しかった、また参加したい」と好評でした。

この経験を踏まえて、今後もさらに神戸市での地域活性化や地域間交流を生み出す活動を「IT」で支援したいという思いがあり、今回の事業を提案しました。

柱としたのは、地域福祉センターなど神戸市内各地にある「地域資源の拡大・有効活用」、子どもと保護者に加えて、地域の人たちとの交流機会につなげる「多世代交流」、子ども・学生といった若い世代の想像力や自信を育み、身近なコミュニケーションから社会とのつながりを学べる「人材育成」の3つです。

これらを念頭に、2023年度は、ロボットを実際に動かしながらプログラミングが学べる「こども向けプログラミング教室」と、将来システムエンジニアを目指す学生を対象に、より実践的なシステム構築が学べる「学生主体型プロジェクト」を計画しました。

まちの活性化に積極的に取り組む長田区エリアなどでモデル実施、子どもも保護者も高い満足度

プログラミング教室では「CODEY ROCKY(コーディーロッキー)」という小型ロボットを使い、プログラミングの基本を、ロボットを実際に動かしながら学べる内容にしました。

タブレット端末上でアプリを使ってプログラミングするので、複雑なコードを記述する必要がなく、感覚的に扱えるため、初めてプログラミングに触れる子どもでも楽しみながら実践できます。

机の上で行うのではなく、床に座ってロボットの動きを間近で見ながら、プログラムの命令に応じてロボットが実際に動いたり光ったりする様子に、子どもたちは喜んでいましたね。勉強会というよりは「プログラミングをしながらロボットと遊んでいる」ような感覚で楽しめたようです。

地域福祉センターに訪れた人も、楽しそうな子どもたちの様子を見て会話に花が咲くなどコミュニケーションや交流を創出できたと思います。実際に参加した子どもや保護者にアンケートを取ったところ、99%が「楽しかった」と満足度が高く、予想以上の反響でした。

開催場所は、市内各地にある地域福祉センターや「ふたば学舎」「丸山コミュニティ・センター」など、長田区エリアをメインに実施しました。丸山コミュニティ・センターは住民主体で地域活性化に積極的に取り組んでいる施設で、新しく子どもが集まるようなイベントを行いたいと考えていたと聞き、一緒に取り組むことにしました。

長田区を含め2023年9月から2024年1月末まで12カ所で実施しました。3月末までで市内25カ所での継続実施を予定しています。参加者は小学校1~6年生の159名で、保護者の方なども含めると合計280名ほどに参加いただけました。

専門学校生・大学生を対象とした「学生主体型プロジェクト」では、こども向けプログラミング教室に講師してもらうほか、企業からシステム構築などの案件をいただき、学生主体で推進する計画でした。

しかし本年度の事業に取り組む期間が10月~3月で、学生たちの冬休みや就活などの時期と重なった関係で参加者を募るのが難しく、20名ほどを想定していましたが3名の参加となりました。そのため2023年度は、プログラミング教室の講師としての活動がメインとなりました。

神戸市のIT教育をさらに推進、未来の子どもたちのために持続的な活動で支援

ITやプログラミング、AI(人工知能)の活用などはビジネスシーンだけでなく、さまざまな分野で浸透しつつあり、これからもどんどん発展していく分野だと考えています。子どもの頃にこうしたデジタル技術に触れることで、将来のキャリア形成のヒントにもなります。

CO+CREATION KOBE Projectに事業が採択され、いただいた助成金などを活用して、活動に取り組むための学習用のロボットやプログラミング用の端末などを準備できました。2023年度は神戸市内に194カ所ある地域福祉センターのうち25カ所での実施となりましたが、2024年度は数十カ所で実施できればと考えています。

今後はさらにコンテンツの拡充やイベント告知方法などを工夫して、より多くの子どもたちや保護者に参加いただけるように取り組みます。あわせて地域住民の人も一緒になって楽しめるコンテンツづくりや、地域間のネットワークを活用した交流なども行い、地域コミュニティの活性化を支援していきます。

神戸市における今のIT教育は、プログラミングなどの学習に使う機材の台数が限られており、機材を循環する形で運用している状況で、すべての小学校に行き届いてはいない状況です。地域に根差して持続的に活動を行うことで、神戸市の子どもたちのIT教育の一助にもなればと思います。

写真/株式会社Axros 提供
取材・文/森本亜沙美