神戸市・ダイドードリンコ株式会社・神戸学院大学の3者の強みを活かした「情報発信&災害対応 自動販売機」が誕生するまで

神戸市×ダイドードリンコ株式会社×神戸学院大学が「地域貢献型自動販売機」を活用した情報発信に関する3者協定を締結

令和4年2月4日、「地域貢献型自動販売機」(デジタルサイネージを搭載した災害対応+情報発信ベンダー)を活用し、災害時の緊急情報や地域に密着した情報の発信に連携して取り組むため、神戸市は、ダイドードリンコ株式会社と神戸学院大学の3者による事業連携協定を締結しました。

この自動販売機のデジタルサイネージでは、平常時には神戸市市政情報や、地域のニュース、天気予報のほか、神戸学院大学の学生が作成する防災啓発コンテンツを配信します。また、災害時には緊急情報を発信するとともに無償で庫内の飲料を提供するなど、「情報発信」と「災害対応」の機能を兼ね備えた自動販売機です。

事業連携協定を締結した、ダイドードリンコ株式会社と神戸学院大学がどういった企業・大学なのか、そして、今回の自動販売機が誕生した背景について、インタビューを基にご紹介します。

自動販売機の可能性を広げてきたダイドードリンコ

大阪に本社を置く、ダイドードリンコ株式会社は、清涼飲料水メーカーの中でも、コンビニやスーパーよりも自動販売機による売上比率が高い会社です。その背景から、自動販売機で飲料を買う短い間に、顧客の満足度を高めるためのコミュニケーションに工夫を凝らしてきた歴史があります。

1970年以降「当たり付き自販機」や「おしゃべり自販機」、「ポイントカードサービス」などを次々に生み出しました。特に「おしゃべり自販機」は、近年ご当地の方言をしゃべったり、インバウンド対応したりと、めざましい進化に注目が集まっています。どの自動販売機にも、飲料を買うわずかな時間に、楽しみや驚きを提供したいという思いが込められています。

地域とつながり、地域に学ぶ。実践教育の神戸学院大学

神戸学院大学は、神戸・ポートアイランドと西区にキャンパスを構え、10学部8研究科を擁する文理集合型の総合大学。神戸市内の私立大学では最大規模で、11,000人以上の学生が学びます。

幅広い教養教育や各学部での専門教育に加え、実践的な学びの場として、産官学連携にも力を入れています。神戸市や明石市をはじめ、多くの自治体と連携しており、学部単位、ゼミ単位での企業との連携も活発に行われています。神戸開港150年を記念して、株式会社ブルボンと神戸市と協働で商品開発した取り組みや、神戸マラソン等のランナーを栄養の観点から応援する取り組みとして、六甲バター株式会社と連携した「マラソンレシピブック」の作成など、様々な取り組みが、度々ニュースなどでも取り上げられています。

神戸学院大学の社会連携について、詳しくはこちら。
https://www.kobegakuin.ac.jp/social_contribution/

きっかけは「あったらいいね自販機開発プロジェクト」

神戸学院大学  経済学部  井上善博教授のゼミでは、様々なアクティブラーニングを推進する中、実践教育の一環として、様々な形で社会貢献・地域貢献に取り組んできたダイドードリンコ株式会社と共同で、令和2年10月に「“あったらいいね”自販機開発プロジェクト」をスタート。ちょうどコロナ禍ということもあり、オンラインやリアルを組み合わせながら、キックオフ、中間報告、最終提案というステップを踏んで進めていきました。

2年生17人の学生は、A・B・Cの3チームに分かれ、それぞれアイデアを競いました。自動販売機の価値を高めるために何をプラスするか、開発コストやランニングコストもシビアに見つめ、実現可能性を常に意識しながら提案をブラッシュアップ。サブスク型、観光PR、防災など、ユニークな20案の中から、ダイドードリンコの担当者により、最も実現性の高いアイデアが光った「デジタルサイネージで情報発信する、災害対応型自動販売機」が採用となりました。

デジタルサイネージで流すコンテンツとしては、学生が作った防災啓発コンテンツや、神戸市の市政情報に加え、神戸新聞社のニュースコンテンツ配信の協力も受けています。そのおかげで、クオリティの高いコンテンツを発信し続けることが可能に。3者の連携+αの協力で完成したこの自動販売機は、公民連携事業の好例となりました。現在、21台が設置され、今後も増やしていく予定だということです。

INTERVIEW

神戸学院大学 経済学部 國武絵梨乃さん

今回の提案は「夢物語ではいけない」、つまり実現性を高めるということを意識して取り組みました。コストをきちんと計算すること、そしてお客様・ダイドードリンコ様・自動販売機の設置者様の3者のメリットを両立させることが、思ったよりハードルが高かったです。

コロナ禍でほとんど集まれない中、チームのメンバーとSNSで連絡したり、提案書のイラストを描く人、数字をまとめる人など、各自が得意分野を生かして取り組みました。できあがった自動販売機を見たときは、素直に嬉しく、大学内にもこの自動販売機が設置されているので、防災のことを頭の片隅にでも置いてもらえたらいいなと思いました。

ダイドードリンコ株式会社 神戸オフィス 日高健一郎さん、田川 晋さん

井上ゼミの皆さんは、提案へのフィードバックに対する修正の精度が高く、素直に反応してくれました。最近の学生は大人しい、と言われますが、いざプレゼンの舞台に立つと皆さん堂々として芯が強く、真剣な眼差しが印象的でした。

今回のプロジェクトは、17インチディスプレイの取り付け工場や、通信事業社、コンテンツの配信の神戸新聞社など、私たち以外にもたくさんの企業の協力があってこそ実現しました。記者発表の時の学生さんの緊張しつつも誇らしい表情を見ていて、社会に貢献する企業として、こういった機会を提供できて良かったなと思います。デジタルサイネージは、まだまだ可能性を秘めていますので、今後も多方面で展開していきたいです。

取材・文/松本有希(株式会社神戸デザインセンター)

写真/神戸学院大学提供、神戸市提供