コロナ禍の商店街を、地元テレビ局ならではのアイデアで元気に!

2020年からの新型コロナウィルス感染症による経済的なダメージは、観光業界や飲食店だけでなく、あらゆる業態の小売業にも波及しています。地元のお客様を大切にし、街に愛されてきた商店街も例外ではありません。

緊急事態宣言による外出自粛により、人通りの絶えた商店街。経営の苦しくなった店舗が撤退し、空き店舗が増えると、活気がなくなり、売上に影響が出てきます。
そんな悪循環を、地元メディアならではのアイデアで、「なんとかしたい」と手を挙げたのが、株式会社サンテレビジョンです。

令和3年度 CO+CREATION KOBE Project(民間提案型事業促進制度)に応募し、ACTIVE型(民間から課題を提案するタイプ)で「まちの賑わいを創出する移動型サテライトスタジオ」が採択されました。

株式会社サンテレビジョンは、神戸元町六丁目商店街に、まちの賑わいを創出する「サテライトスタジオ」を開設。「放送拠点の多面展開による街の賑わいの醸成」と「地域住民との連携による新しい放送の実現」を目標として実施されました。

主な事業は、①サテライトスタジオの制作 ②オンライン配信番組の制作・配信 ③地上波での特別番組の制作・配信 の3つです。

2021年7月に企画書を提出、8月にプレゼンを経て採択された9月から本格的な準備がスタート。9〜11月を調整期間、12月に実施というスケジュールで走り出しました。

2021年6月に、JR神戸駅近くの新社屋へ移転したサンテレビ。サテライトスタジオ設置の候補として、当初は別の場所も候補に挙がっていましたが、神戸市からの推薦もあり、神戸元町六丁目商店街と話をすすめることになりました。

メディアならではの発信力・企画力で、神戸を盛り上げる一役を担いたい

普段は広告営業を担当している、中野有加里さん(写真右)、元地彩佳さん(写真左)の2名が中心となって企画を遂行。

今回、主に地上波の番組作りを担当した中野さんは、「以前から街中でロケをしていると、人が集まって賑わいが生まれることを感じており、サテライトスタジオを構えたら、もっと長期的な賑わい創出につながるのでは?と考え、企画しました。

また、コロナ禍で増えた商店街の空き店舗を、サテライトスタジオとして利活用することで、人が集まる仕掛け作りが可能になると思いました。」と話します。前例のない企画に調整が難しい場面もたくさんあったということです。

例えば、サテライトスタジオとして使う物件を探す中、空き店舗は商店街の所有ではなく、不動産会社や管理会社の所有物件だと知り、企画通りに実現できない可能性もありました。

ところが、今回は幸運にも神戸元町六丁目商店街の中心メンバーの中に空き物件をもっている方がおられ、使わせていただくことができたそうです。地元の協力があってこそ、「商店街の空き店舗にサテライトスタジオを設置する」という構想が現実となったのでした。

商店街やゲストと協力して番組作り。
オンライン配信は約5,500人が視聴

サンテレビサテライトスタジオTwitterから画像を転載(@satellitesuntv)

主に番組配信を担当した元地さんは、入社2年目。

「今回の企画で、神戸元町六丁目商店街との連携強化を図るきっかけづくりができました。商店街の理事を務めていらっしゃる方々のほかにも、チラシやポスターを積極的に設置していただいたり、番組の中でのプレゼント企画に賞品を出していただいたり、たくさんご協力いただきました。」と話します。

元地さんが担当したのは、12月18日15〜18時に実施した、第100回高校サッカー選手権大会を特集したオンライン生配信です。

<番組タイトル>
オンライン生配信『モトロク×サンテレビ サテライトスタジオキックオフイベント〜キックオフだけに兵庫の高校サッカーを語りながら メリーモトロクリスマス!』

<配信日時>
2021年12月18日(金)15:00〜18:00

<ゲスト>
・吉田孝行(滝川第二高出身 V・ファーレン長崎コーチ)
・森島康仁(滝川第二高出身 藤枝MYFC)
・土井良太(神戸弘陵学園高出身 FC淡路島)
・清水圭介(滝川第二高出身 京都サンガF.C.)ほか
<コメンテーター>
・近藤岳登(愛知・愛産大三河高出身 元ヴィッセル神戸)
<オンラインコメント>
・朴康造(滝川第二高出身 元ヴィッセル神戸)
・岡崎慎司(滝川第二高出身 FCカルタヘナ)
<MC>
・堀 詩音(NMB48・コンサドーレ札幌ファン)
・湯浅明彦(サンテレビアナウンサー・全国高校サッカー選手権に実況で20回参加)

<サンテレビ公式Youtubeチャンネル>
https://www.youtube.com/channel/UCoslznRuvXIAriI5z51-DPg

配信の結果は、サンテレビ公式Youtubeチャンネルで約5,500人が視聴。第100回の記念大会であったことや、150年前に日本で初めてのサッカーが行われた発祥の地である神戸からの配信だったことが、視聴者の興味を惹きつけたようです。

また、番組の実況を担当したサンテレビ・湯浅アナウンサーは、10年以上高校サッカーを見守ってきた人であり、その実況も話題となりました。

配信当日を振り返り、元地さんは笑顔で話します。

「控室はサッカートークに花が咲き、まるで同窓会のように盛り上がっていました。出演者の皆様は、神戸の盛り上げに賛同していただき、出演を快諾。地元を思う熱い気持ちに、こちらが勇気づけられましたね。」

こうべ小学校、神戸元町六丁目商店街との連携で、にぎわい創出の相乗効果が生まれる

サテライトスタジオの番組セットに飾られていた、可愛らしいクリスマスツリーに飾られたメッセージは、神戸元町六丁目商店街との縁も深い、神戸市立こうべ小学校の6年生に「将来の夢」を一枚ずつ書いてもらったものです。合計約120枚ものメッセージには、子どもたちの夢が詰まっていました。

12月24日の地上波での番組放送を担当した中野さんは
「ぜひこういったサテライトスタジオによる盛り上げ企画を継続していきたいという思いから、別の場所でも使うことができるような仕掛けを施しております。元町六丁目商店街様との第2回目はもちろん、他の地域の盛り上げにも貢献できるように制作しています。」と話します。

<番組タイトル>
【キャッチ+】&【熱血!タイガース党】どどんっと!4時間 おっ!サンタSP

<放送日時>
2021年12月24日(金)18:00〜19:00(サテライトスタジオからの放送時間)

<サテライトスタジオゲスト>
・桧山進次郎(阪神タイガースOB)
・井川慶(阪神タイガースOB)
・濱口優(よゐこ)(松竹芸能)
・木本武宏(松竹芸能)

<番組ホームページ>
https://sun-tv.co.jp/santa-sp

<サンプリング協賛>
・アサヒビール、アサヒ飲料 (ビアリー、ウィルキンソン、三ツ矢サイダー)

サテライトスタジオを設置した、神戸元町六丁目商店街は、神戸元町商店街の西側の玄関口。最寄駅は阪神西元町駅、JR神戸駅になります。

こだわり職人の店やおしゃれなセレクトショップには熱心なファンが多く、他にはない特色豊かなイベントを定期的に開催していましたが、コロナ禍により中止を余儀なくされていました。

そんな中、神戸元町六丁目商店街でも、このサテライトスタジオ設置をきっかけに、約2年ぶりにイベントを企画。「モトロクHAPPY HOLIDAYS NIGHT」と題して、キッチンカーや街角音楽ライブ、キャンドル装飾などを手掛けて、一緒に盛り上げることに。

サンテレビの森村さん、中野さん、元地さんらと、神戸元町六丁目商店街のメンバーは、何度も打ち合わせを実施。グループLINEを使ってやり取りをしながら、細かい調整を重ねていきました。

中野さんは当時を振り返り、「この企画がなければ、こんなにバイタリティある地元の方々と一緒に1つのものを作り上げる機会はなかったと思います。当日、シルバーに輝くDJブースがありましたが、普段は商店街の入り口にあって、キッチンカーとして使われているんです。いつもその前が打ち合わせ場所でしたね。」と語ってくれました。

「いま、商店街のPRについて、私たちの技術や知見を生かして、お手伝いできることはないか模索しています。例えば、先日は、動画配信をご自身のスマホで撮影し、簡単な編集をして配信できるよう、レクチャーしました。
季節にあった商品紹介やタイムリーなお買い得情報などを、商店街に関わる人がご自身で発信できるようになり、お客様が増えたり、売上UPにもつながるといいなと思っています。

今回の企画を継続して実施するには、予算の捻出が最大のハードルです。ですが、『人口流出』『経済の活性化』は神戸市の大きな課題であり、私たちも地元メディアとして、何か解決のお役に立ちたいと感じています。

いつも人で賑わう、三宮・元町といった中心部ではなく、もっと西の神戸・兵庫・長田などのエリアや、垂水・西神中央といった再開発地域でも、今回の経験を糧に、サテライトスタジオを活用した取り組みを継続していく道を探っていきたいです。」

企画から運営まで。自分たちの商店街を、自分たちの手で盛り上げる

神戸元町六丁目商店街は、業種も様々な若手店主が中心となり、普段から商店街の活性化に積極的に取り組んでいることで知られています。

取材当日に集合写真をお願いすると、イベント設営の忙しい中にも関わらず集まっていただき、わきあいあいとした雰囲気と笑顔が印象的でした。

そんな神戸元町六丁目商店街の代表を務める・片山喜市郎(STUDIO KIICHI 店長)さんに、今回の企画についてお話をお伺いしました。

「もともと神戸元町六丁目商店街は、平日は朝夕を中心に周辺オフィス街の人通りがあり、休日は観光客+地元のお客様と、全く異なる顔を持つ商店街です。

商店街から徒歩10分弱にある、JR神戸駅の再整備に合わせて、キララ広場を活用して導線を作る企画を色々と考えている中で、神戸市を通じてサンテレビのサテライトスタジオ設置の取り組みをお伺いし、クリスマス時期に「モトロクHAPPY HOLIDAYS NIGHT」を実行することになりました。

キララ広場の丸太の装飾やキャンドルの設置も、すべて商店街の若手スタッフで行っています。キッチンカー6台は、キッチンカーへの助成も組み合わせて実現。夜になるにつれ、明かりと笑顔があふれ、にぎわいが生まれていました。 これからもキッチンカーを毎月呼んだり、近所に移転されてきたサンテレビさんとも、このサテライトスタジオの企画を機に、関係を継続させて商店街を盛り上げていきたいですね。」

<イベント概要>
モトロクHAPPY HOLIDAYS NIGHT
主催/神戸元町六丁目商店街振興組合
会場/神戸元町六丁目商店街、キララ広場

<開催日時>
2021年12月24日(金)〜25日(土)

・キッチンカー集結
 12月24日(金)16:00〜20:00
    25日(土)11:00〜20:00

・DJブース ミュージックラウンジ
 12月24日(金)16:00〜20:00
    25日(土)16:00〜20:00
 [出演DJ]
 ・Cinderella Honeymoon
 ・Asato Yasui
 ・NG?(エヌ・ジー・クエスチョン)
 ・nori
  and more…

<ホームページ>
https://www.kobe-motomachi.or.jp/event/2021/12/moto6-happy-holidays-night.html


参考サイト

株式会社サンテレビジョン
https://sun-tv.co.jp/company

令和3年度 CO-CREATION KOBE Project 募集記事
https://kobeppp.jp/co-creation-kobe-project

令和3年度 CO-CREATION KOBE Project 選定結果
https://kobeppp.jp/topics/3281

取材協力/神戸元町六丁目商店街
https://www.kobe-motomachi.or.jp/about-us/ (神戸元町商店街公式ホームページ)


取材・文/松本有希(株式会社神戸デザインセンター)

写真/倉科直弘