神戸市と江崎グリコ株式会社は2013年の7月に初の包括連携協定を締結後、様々な分野の課題解決に向けた連携を進めてきました。
今回、中学生の皆さんに大好きなお菓子を通して科学の力を感じてもらい、理工系分野への興味関心を促すことを目的とした神戸市女子中学生のための「理工チャレンジプログラム」を共同で開催。女性の研究者や技術者が少ないと言われている理工系分野において、女性の活躍を進めることで、多様な視点や発想を取り入れ、社会課題の解決や持続可能な社会の発展につなげることが期待されています。このイベントには、理工系分野で活躍する女性のキャリアイメージを描いてもらいたいという想いが込められています。イベントの募集定員は20名だったにも関わらず、応募人数はなんと約120名。そんな注目度の高かった「リコチャレ」の様子をご紹介します。
グリコピア神戸で広がる、お菓子づくりのプロセス
イベントの開催地は神戸西区にある江崎グリコの工場見学施設「グリコピア神戸」。当選した中学生の皆さんが少し緊張しながらも、目を輝かせて来館してきました。まずは1Fのホールで館長の瀬戸山さん、今回のイベントを企画された下志万さん、山本さん、神戸市の村田さんよりご挨拶。また皆さんでそれぞれの自己紹介や呼ばれたい名前、今日楽しみにしていることなどをおしゃべりしながらコミュニケーションを図りました。
オープニング終了後、まずはグリコのお菓子づくりのプロセスを学べる工場を見学。「ポッキー」や「プリッツ」などの製造過程を間近で見ることができるほか、特にチョコレートがけの工程はCGで再現されているので非常に興味深い内容です。またバーチャル空間でのお菓子作り体験「デジタルクッキング」は、それぞれが好きなグリコのお菓子をデザインするという体験ができ、皆さんの個性が光る作品がたくさん誕生しました。
科学が生み出す焼き菓子の世界と最先端のVR体験
いよいよ皆さんが楽しみにしていたプログラムの時間がやってきました。1つ目のチャレンジは「焼き菓子試作体験」です。内容はビスコの生地を作るという工程を体験するというもの。焼き上げた後は、自分で作った試作品を持ち帰ることができるのも魅力のひとつです。「お菓子づくりが理系に関係あるの?」という疑問が生まれそうですが、ビスコのような焼き菓子の膨らみや硬さは細部にまで計算され、また温度や湿度、オーブン内の熱の伝わり方に影響されています。これらは科学の法則に従っているため理系の要素がおおいに関わっているのです。
2つ目のチャレンジは「VR操作体験」です。江崎グリコではお菓子の製造工程において、VR(バーチャルリアリティ)や3Dスキャナーを活用することで、製造プロセスの効率化や品質向上を図っていますが、それをゲーム感覚で体験してもらいました。仮想環境の中で荷物を運ぶという模擬体験は皆さんにとって生まれて初めての経験。製造ラインの効率化や最適化など、現実の製造業における課題をVRシミュレーションゲームの中で想像し学ぶことで、工学的な思考が身についたかもしれません。
グリコメンバーと語る、仕事の魅力と未来のキャリア
最後は江崎グリコの女性メンバーと皆さんとで和気あいあいと座談会が行われました。現在の仕事の内容や理系分野の魅力などをお話いただいた後、皆さんからの質問が相次ぎました。「この仕事の1番のやりがいは?」という質問に対して「実際に作った商品がお店に並んで、購入いただくシーンを見た時です。」「おいしさ評価の担当者として、製品開発の担当者さんに“こういう味の表現ができる”と提案して喜んでもらえた時です。」「どのような味にしようかとかいろいろ試行錯誤する時が楽しくてやりがいを感じます。」とそれぞれご回答。また今後の進路のアドバイスには皆さん真剣な眼差しで聞いていました。その後は全員グリコポーズで記念撮影して無事に終了。今日の感想をうかがうと「デジタルクッキングがとても楽しかった」「座談会で将来役立つことが聞けてよかった」「文系希望だったけど将来の選択肢が広がった」「グリコのお菓子にいろいろな人の想いが詰まっていることを知ったので、これからはもっと大切に食べたい」と満足そうなご様子で「リコチャレプログラム」は大成功のイベントとなりました。
「リコチャレ」に込められた社会貢献への想い
イベントを振り返り、江崎グリコの社員の方々に感想を伺いました。
CSR推進室の下志万さんは「これまで当社ではCSRやダイバーシティ&インクルージョンに関連したイベントを行ってきましたが、今年は特に社会に向けたインクルーシブアクションをテーマとして、社員自身が社会課題の現場を知り、その課題解決やサポートできるような企画を検討中でした。このようなタイミングで神戸市との連携によりイベントが実現したことを嬉しく思います」とお話しされました。
また商品技術開発研究所の戸川さんは「理系の知識を使ってお菓子が作られていると皆さんにお伝えできて良かったです。また焼き上がったお菓子を美味しそうに食べている様子を見て、開発者として素直に嬉しかったですね」とのこと。
技術開発部の森さんは「VRというまだ女性が踏み込みづらい分野に挑戦してもらえたたことに満足しています。今度はVRを活用して、実際のものづくりを体感してもらいたいです」と次回イベントへの意欲を見せてくれました。
「理工系に関わらず、自らが主体的に進路を考えられる機会になってもらえれば」と話す下志万さん。また皆さんに「将来、女性が活躍できる江崎グリコで一緒に働ければ嬉しいです!」とメッセージを送りました。 女性のキャリアアップを含め、社会課題の解決に貢献していきたいという江崎グリコ。神戸市と連携を強化し、様々な取り組みに挑戦していく決意を感じました。
取材・文/木村沙陽子
写真/二宮幹(株式会社神戸デザインセンター)