映像のプロとして挑む、ウェルビーイング研究の認知拡大/株式会社サンテレビジョン

最近よく耳にする「ウェルビーイング(well-being)」という言葉。身体的・精神的な健康だけでなく、社会的・経済的にも満たされた状態を指し、個人だけでなく社会全体がウェルビーイングな状態であることが、これからの持続可能な社会に欠かせない価値観だとされています。

ぴったりくる日本語訳がないことで、なかなか意味や定義が広まりにくい言葉ではありますが、「健康経営」というフレーズで企業が取り入れたり、「健康寿命」に関する研究が大学で行われたりという動きが見られます。中でも、神戸大学は「ウェルビーイング先端研究センター」を2022年11月に立ち上げ、領域を超えた総合知を結集した研究や社会実装を進めるなど、全国でも先進的な取り組みが注目されています。

株式会社サンテレビジョンは、神戸大学と2021年に包括連携協定を締結し、阪神・淡路大震災の取材映像のデジタルアーカイブに取り組んでいます。そして、さらなる連携強化で地域・社会に貢献しようと2023年にスタートしたのが、ウェルビーイングの研究を推進する共創チャレンジです。

サンテレビは、このプロジェクトでCO+CREATION KOBE Projectにエントリーし、採択されました。具体的には、ウェルビーイングを紹介する番組を制作し、約780万世帯の視聴者へ、広く、正しく、分かりやすく届けるものです。プロジェクトの発案者である経営企画部部長・大寺秀甫さんと、本社営業部の森村勇太さんに、番組ができるまでの背景や、伝えたい思い、今後の展望をお伺いしました。

アカデミックな内容を、どう分かりやすく咀嚼(そしゃく)するか

平日の夕方に放送している『NEWS×情報 キャッチ+(プラス)』という情報番組で、11月6日〜10日の5日間、毎日15分ほどの特集コーナーを組み、ウェルビーイングについてお伝えしました(https://sun-tv.co.jp/wellweek/)。「運動」「食」「環境」など、毎日切り口を変えてお届けしたのですが、番組作りの工夫について、認知症予防・健康づくりのプログラム「コグニケア」を例にお話します。

高齢化がますます進展する中、神戸市でも、健康寿命を延ばすこと、認知症を予防することは、重点課題とされています。神戸大学が独自に開発した「コグニケア」は、糖尿病・高血圧・生活習慣病・フレイル予防に効果があるとされる健康情報サービスです。どうすれば、この研究に視聴者の興味を惹きつけ、伝えたいことを伝えられるか。制作チームは頭を絞って、企画を立てました。その結果、コグニケアがどういうものかを番組で詳しく解説するだけでなく、インストラクターにスタジオに来てもらって、頭と体を同時に動かす「二重課題運動」を出演者とともに実演することに。こういった動きのある情報は、映像でしか伝えられません。また、誰がどんな解説をすれば、最も視聴者に伝わるかという観点で、ご出演いただく神戸大学の教授の調整にも力を入れました。

今回、CO+CREATION KOBE Projectに採択いただいたことで、神戸市と連携している事業であることが信頼感につながり、スポンサーの第一生命保険様や神姫観光様に、産官学連携の意義や事業理念について、しっかりとお伝えすることができました。

また、番組作りを通して、改めて、私たちテレビ局の「分かりやすく伝える使命」を認識しましたし、それを実現する企画力・コンテンツ力では負けないと感じました。今回のプロジェクトのように、大学の研究をテレビ局が咀嚼して伝える、というスキームは、世の中に求められている力なのかもしれません。

産官学連携の可能性をこれからも探っていきたい

番組放送後、スタッフからウェルビーイングに関する情報提供があったり、女性ファッション誌で特集していた記事を教えてくれたりと、関心が高まったと感じています。私たちとしては、ウェルビーイングの社内理解を深めたいという狙いもありましたので、これからも社内外への発信を続けていきたいと思います。

そして、神戸大学以外に、いくつかの大学との連携プロジェクトがあるので、どう進めるべきか、特に協賛スポンサーの集め方について知見を得ることができました。サンテレビが企画を立て、行政のサポートを得つつ、企業協賛が肉付けされることで、質の高い情報発信ができるということ。大学の研究という有益なコンテンツを届けることは、スポンサー企業のブランディングに寄与できること。こういったことを丁寧に、地元企業にも伝えつつ、テレビ局はコンテンツ力に磨きをかけなければなりません。今後も、産官学連携の輪を広げ、「わかりやすく伝える力」で神戸に貢献していきたいです。

写真/株式会社サンテレビジョン 提供
取材・文/松本有希(株式会社神戸デザインセンター)