早稲田大学「学食研究会」が選ぶ「学食ランキング」で、関東圏の1位に2年連続で輝き、殿堂入りを果たした、東洋大学・白山キャンパスの学生食堂。その美味しさとメニューの充実ぶりで、飲食業界からも注目されているこの学食を2006年から運営しているのが、株式会社ORIENTAL FOODS(オリエンタルフーズ)です。
現在は、東洋大学・桃山学院教育大学・桃山学院大学・神戸国際大学・関西学院大学の学食の運営に加えて、東京や関西で飲食店を経営するほか、キッチンカー事業も手掛けています。また、代表取締役・米田勝栄さんは、学食の大きな可能性を感じて「学びメシ」というプロジェクトを2022年から始動。学食に著名人を招き、学生との直接対話ができる学びの場を、学生とともに企画・運営するというコンセプトで、メディアからも注目を集めています。
CO+CREATION KOBE Projectでは、神戸・六甲アイランドにある神戸国際大学で「夢食堂」の実施を企画・提案し、採択されました。学生が主体となって企画する意味や、地域のためになる学食の在り方について、米田さんにお話を伺いました。
学食を運営する経験が、学生を変える
大学の学生食堂は、通常、学生や教職員のための飲食店であり、閉じられた施設です。運営する企業にとって、大学の長期休暇中は売上が下がり、繁閑の差が大きいこと、また、単価を上げにくいことから、経営環境が悪化し、撤退も相次いでいます。私は、東洋大学で学食の運営を任された時から、「日本の学食を変えていきたい!」という強い思いを持っており、地域に開かれた学食の在り方を模索してきました。学食を開かれたものにすることで、学生と地域の交流が生まれ、学食が学びの場となります。現に、桃山学院大学の学食では、経営学部の学生が運営に携わることで、マーケティングや集客戦略を実践的に学んでいます。
また、地域の子どもたちやお母さんを支援する「フードリボンプロジェクト」の活動に共感し、神戸国際大学と桃山学院大学の学食で実施しています。子ども食堂は、地域団体による食事の無償提供が一般的ですが、フードリボンプロジェクトの「夢食堂」では、大人が数百円のフードリボン(食事チケット)を購入し、訪れた子どもがそのフードリボンを使って、食事を取ります。月1回とか週1回ではなく、毎日実施することで、地域への継続的な支援に取り組んでいるのが、子ども食堂との違いです。
学食の運営や夢食堂の企画に携わると、学生はどんどん変わっていきます。「事務の仕事がしたい」と言っていた学生が、自分がアイデアを出し、働いて、お客様に喜んでいただく体験をすることで、接客の楽しさに目覚めて、今はUSJでイキイキと働いています。また、教職を目指す学生が、夢食堂の運営を通して、子どもたちの”憧れの存在”になれたことで、さらに教育への情熱を高めています。食堂の運営の経験は、特別な経験となり、学生の就職活動においても強力な武器になるんです。
飲食業は、仕入れから目の前のお客様の笑顔まで、経営のすべてを体験できる唯一のスモールビジネスだと思っています。その学びの場として、学食以上に適した場はありません。成功体験・失敗体験を学生のうちに積んで、自分のやりたいことを掴み、自信を持って社会に出てほしいと願っています。
子育て支援・地域活性化・学びの場。一挙にかなえる「夢食堂&夢食堂縁日」
今回、CO+CREATION KOBE Projectで提案した「夢食堂」は、神戸国際大学のご協力を得て、実施しました。同大学は、教職員と学生の距離がとても近く、地域とのつながりにも非常に積極的な学風です。同大学のある六甲アイランドは、近年商業施設やスーパーの撤退が相次ぎましたが、ファミリー層も増えてきています。
長期休暇中の大学を活用する「夢食堂」(2023年8月1日〜9月22日実施)で、地域活性化に貢献し、夏休みの昼食づくりに追われる子育て家庭に、1食でも息抜きを提供するという子育て支援ができるのではないかと考えました。さらに8月22〜25日には、外国人も多い地域住民に日本の夏祭り文化を体験してもらう「夢食堂縁日」を開催し、企画・運営を通して学生の学びの場になるなど、いくつものメリットが生まれるように考案しました。大学から紹介していただき、CO+CREATION KOBE Projectに応募・採択されたことで、「大学を地域に開放する」活動に、自治体のサポートをいただくという画期的な事例ができたのではないかと感じています。
1日約100人以上のこどもたちが来場し、イベントは大成功!
「夢食堂 フードリボン✕神戸国際大学食堂」では、合計326人分の夢チケット(1人300円の子どもの食事代を贈る寄付)が集まり、子どもたちに食事を提供しました。子どもが好きなメニューを日替わりで用意したり、絵本コーナーを併設したり、親子連れで楽しく過ごせるようにさまざまな工夫をしました。保護者の方には、有料で食事を提供していたのですが、ママ友同士で来店していただいたり、何度かリピートしてくださったり、思い思いに過ごしていただけたようです。
そして、「夢食堂縁日」イベントのプログラムは、主に5つ。縁日の屋台コーナー、お仕事体験、ワークショップ、マルシェコーナー、図書館の開放と盛りだくさんでした。
射的や輪投げといった縁日での定番ゲームや、わたあめ・かき氷などの縁日フードが楽しめる屋台は連日大盛況。子どもたちは縁日チケットを購入して、思い思いに楽しみ、連日来場するリピーターもいらっしゃったほどでした。また、縁日チケットの販売を手伝うと、1枚もらえるというお仕事体験も人気だったほか、最終日のすいか割り体験や、六甲アイランド内で貸農園を営む株式会社北善塔さんのご紹介で実施した野菜の販売マルシェも好評でした。
結果として約500人以上が来場するイベントとなり、予想を上回る結果に。学生もスタッフとして約10人が企画から参加してくれました。来年からは縁日屋台を手作りしたり、主体的な企画を立ち上げたり、もっと深く関わってほしいなと考えています。今後も、神戸国際大学の学食を生かして、六甲アイランドの活性化に貢献できるように、また日本中の学食で地域貢献できるよう、チャレンジを続けていきます。
写真/株式会社ORIENTAL FOODS 提供
取材・文/松本有希(株式会社神戸デザインセンター)